地域観光視察

「奈良県の新しい形の宿泊と移住者による流行の施設」の視察レポート

2019年1月27日(日)、奈良県での地域外からの移住者が活躍する古民家を改装した宿泊施設と飲食店、また、明日香村を中心とした教育旅行受入れの取り組みについて視察してまいりました。

今回の視察は、吉野ビジターズビューローの事務局長の山本訓弘氏にコーディネートとご案内をいただきました。

<行程>

10:00     桜井駅集合

10:10~11:00 大神神社へ参拝

11:00~12:10 町家ゲストハウス三輪

12:30~13:15 三輪山本(昼食)

13:30~15:30 大和飛鳥ニューツーリズム(於:明日香商工会)

15:40~16:30 Caféことだま

16:30     視察終了

1.町家ゲストハウス三輪(桜井市)

・運営者の藤村ご夫妻からお話しをいただきました。

■ゲストハウスの概要

・宇陀市で介護事業をされていたご夫婦が移住して、もともと八百屋だった古民家を借り受けて改装し、2012年に開業された。

・ご夫妻は当初移住を考えておられたが、ある機会にゲストハウスの運営を勧められたことがきっかけで、富士箱根へのゲストハウス視察など、一から勉強して自分たち流に解釈し試行錯誤しながら事業をスタートした。

・施設の概要は、1階に共用の居間、トイレ、洗面所。2階に個室4部屋(1人用から3人用まで4タイプ)と、こじんまりとしたお宿です。

・お風呂以外の飲料水や食事に利用する水は全て高野山のお水を使用するというこだわりぶり。食事は朝食の提供のみだが、高野山のお水を使用したご飯をはじめ食事の満足度がとても高い。

・お風呂は離れで新設。決して広くはないが、檜風呂となっており、シャンプーとボディソープも高野山のお水を使用したものを提供するこだわりよう。

■宿泊客など

・2018年8月に延べ7,000人のお客様を迎え入れ、今では年間1,300人を超える宿泊客数を受入れる。宿泊客は一人旅の利用が多くほとんどが女性客。出発地は関東からが多い。観光だけではなくビジネスでも利用されており、中には下宿のように長期滞在するビジネスマンやビジネス後に三輪周辺の観光のために利用する方も多いという。今のところ国内客中心で営んでおられる。

・お話を伺い感じたのは、ご夫婦とも大変明るく話し好きで人柄も温かいこと。この宿のモットーは、お客様との会話を大切することといい、奥様曰く「自らの知人や親族が来てくれた時と同じ様に当たり前にお客様に接しているだけで、何も特別なことはしていない」との言葉がとても印象的だった。

・中にはこうした気遣いがむしろ煩わしいと感じるお客様もおられたらしく、奥様がクチコミでその投稿を見た時には相当落ち込まれたそうだ。今はそんな温かい雰囲気が好きでリピーターになるお客様の割合が多く、今ではこうした雰囲気を売りにして、それを好むお客様に選んで頂き、また自分達もお客様を選んでいるのだという。

こうしたご夫妻の思いやおもてなしに触れるために、ぜひ実際に泊まってみたいと思う宿でした。

2.一般社団法人 大和飛鳥ニューツーリズム

明日香村商工会にて、同商工会(大和飛鳥ニューツーリズム協議会)の下田正寿氏からスライドと資料を元に、事業の取り組みについてご説明をいただきました。

■明日香村の概要

・明日香村の人口は5,573人(2019年1月1日現在)。主要産業はイチゴなどの農業と観光関連産業。村内には歴史の教科書にも登場する有名な古墳や史跡が数多く点在している。

・1980年制定された「明日香法」により、歴史的風土の保存を目的に明日香地域全域に厳しい建築規制や開発制限がなされ、美しい日本の原風景が守られる一方で、経済の衰退や人口流出を招いているとのこと。

■体験交流型観光事業取り組みのきっかけ

・観光関連の産業の再生による地域活性化を目的に、商工会が主体となって「なら観光ビジネスカレッジ」を開催し、観光振興を担う人材育成のための講義やワークショップをスタートした。

・2011年に体験交流型観光事業(古民家ステイ、各種体験プログラム)をスタートさせた。

■大和飛鳥ニューツーリズムの事業内容など

・事業内容は、①大和・飛鳥民家ステイによる国内の教育旅行、②インバウンドの推進、③各種体験プログラムの造成と販売、④教育旅行受入に伴う学校交流コーディネート、など

・提供する学習内容は、飛鳥地域ならではの内容を意識し、①「日本のはじまりの地」である大和・飛鳥の歴史文化の学習、②古代米や大和野菜などの食材を使用した日本食の提供による食育、③ホストファミリーとの協働作業などの交流から生まれるコミュニケーション能力を育てること

・これらの目的を徹底するため、ホストファミリーにはトイレやお風呂、睡眠以外は学生と一緒にいることやここでしか味わえない体験を提供するように徹底している。例えば、大型ショッピングセンターや衣料量販店などに案内することや子供が大好きなハンバーグや唐揚げ、バーベキューなど上記の趣旨に反しないように厳しく指導しており、違反し改善してもらえない場合は、受入れの依頼を止めることもあるという。

・こうした体験型教育旅行を受入れている地域は他にもあるが、京都や大阪、空港などからのアクセスが良いことから飛鳥の受け入れが一番多く、2016年度以降は6,000泊以上の受け入れ実績があった。驚いたのことは人数ベースで約半分が海外からの中学、高校生。特に台湾が最も多く、シンガポール、中国、マレーシア、アメリカ、カナダなどこれまで40カ国以上の国と地域から受け入れている。

・受入れ施設は、明日香村の125軒を中心に橿原市や宇陀市など合計で256軒(2018年12月現在)。スタート当初は、商工会が推進していくことに周囲は懐疑的であった。また受け入れ側もどこも受け入れたがらず、下田氏が地縁や血縁などを駆使して、一度やってみて駄目だったら辞めれば良いと、一軒一軒個別にお願いをして回ったそうだ。

・この事業に取り組んで良かったことは、地域への経済波及効果はもちろん、宿泊や飲食を営む観光事業者が増えたこと、地域住民のやりがいが生まれたこと、海外の学生受け入れに伴い草の根での交流が生まれたこと、とのこと。

・終了時の離村式では特に海外からの学生は涙を流して別れを惜しむケースもあるといい、草の根の交流では、リピーターとなって明日香村に訪れる外国人もおられるそう。

・今後は、民泊新法の施行を踏まえ、古民家を使った個人客用の宿泊施設運営を創業する事業者を増やし、個人客の獲得に努めていきたいそうです。

■全体をお聞ききしての印象

この事業の推進された下田氏の体験型観光の推進による地域活性化への強い熱意と信念を感じた。

例えば、受入れ施設の拡大のための個別訪問、主旨に反する受け入れ施設への徹底した指導や、趣旨を徹底するための海外の旅行会社への妥協しない姿勢など。

こうした強い情熱と信念があればこそ、教育旅行の品質が保たれ事業が継続できている。また、受け入れ施設が増加傾向となり、教育旅行受け入れによる、村の活性化に繋がっていると感じた。

3.古民家カフェ「ことだま」

古民家カフェ「ことだま」でテータイム。出店の経緯やお店の概要について、吉野ビジターズビューローの山本氏より説明いただきました。

・「ことだま」は、明日香村が大好きなご夫婦が他県から移住して2006年の夏に別の場所で喫茶店をオープン。2015年に現店舗である築200年弱の元酒藏の古民家を自らで改装し、移転オープンした。

・店内には喫茶スペースの他、ギャラリースペースもあり、地元の工芸作家の作品が展示販売されている。

・飛鳥内で人気のお店かつ休日ということもあって、店内は非常に混み合っており10分ほど待った。女性客がとても多いお店。平日も、地元の明日香村だけでなく、橿原や宇陀、桜井などから集客しているそう。

・お店の雰囲気は、レトロで非常に落ち着いた雰囲気であり、店内にある家具や調度品、装飾などがとてもセンス良く並べられている印象を受けた。家具や調度品は、このお店のオープンにあたって、地元の方から寄贈していただいたものが多いという。

・今回、残念ながら食事はしなかったが、メニューを拝見すると、地元で採れた食材をふんだんに使った食事を提供している。

・我々はコーヒーやチャイなどの喫茶が主だったが、メンバーの中には、デザートの注文も。デザートもいちごをたっぷりと使用した見た目も可愛らしいインパクトの強いものだった。

今回の視察を通じて、老若男女を問わず地域外からの移住者による、歴史のある町ならではの古民家を使った新しい宿泊施設や喫茶店などを視察しました。

日本家屋の味わい深いうまく活用した事業者が元気よく、一生懸命に取り組む姿と観光を通じた地域を盛り上げていく動きを直接見聞きでき、とても有意義な視察となりました。

執筆 観光ビジネス研究会 滝口謙一

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